★労働相談 事例紹介★

《労働相談事例》

 

事例1:Aさん(学習塾でのアルバイト)

1、相談内容

塾でアルバイトをしている大阪の大学4回生から2017年1月に相談を受けた。

その塾教室は、非常勤講師23名と社員1名の体制で運営され、教室の授業外の業務の多くを学生アルバイトが行っていた。

Aさんは、教室リーダーに選任され、週3~5日入っており、2年間勤務を続けていた。

相談内容は、18時間を越える時間外労働が計32日あったにもかかわらず、賃金の25%の割り増しがなされていないこと(*1)、及び、年次有給休暇の申請を提出しても、有給を取らせてくれない(*2)、との事で相談を受けた。

しかし、勤務実態について、Aさんよりお話をしていくうちに、学生アルバイトにかなりの負担を強いる労働実態が明らかとなった。

下記1~4のように、授業以外でも多くの事務作業を行っていたが、本部から「授業以外の事務時間の申請は、講師全員で100時間以内におさえて欲しい」との指示があったため、他の講師の事務時間の申請を優先した。そのため、リーダー・副リーダーは実際よりもかなり過少にしか、授業外労働時間を申告していなかった。「サービス残業」

これだけの責任と業務がありながらも、教室リーダーとして特別の手当が生じるわけではなかった。

Aさんからは、次に教室リーダーになる後輩の為にも、退職前に、塾の労働環境を何とか変えたい!との強い思いを持って相談に来られた。

 

2、労働環境の問題点

 

1)授業カリキュラムの作成業務

夏期講習時には生徒58人分の授業カリキュラムを作成しないといけない時もあった。

1ヶ月1時間しか授業外で事務時間を申請しないように言われ、その中でやって欲しいと言われても、とても足りない。1枚につき15分、絶対に必要な教材コピーなども含めると230は掛かってしまう。

 

2)予習の時間

本社から指示はしないといっているが、予習をしないと適切な授業ができない。

高校3年生1人につき1ヶ月少なくとも2時間は必要になる。

 

3)頻繁に出席を求められる会議のため、授業とのバランスがとれない。

2月に1回「教室会議」(教室講師全員参加) 3時間

2月に1回「教室リーダー会議」      2時間

2月に1回「エリアリーダー会議」      2時間

3月に1回「ブロックリーダー会議」(代理で出席) 2時間

(会議の資料作成に、2~3時間かかる)

 

4)他の講師の報告書のチェック作業、修正作業、スキャン、本社送付、とじ込み作業

 教室リーダーという立場上、他のアルバイト講師が作成した授業の報告書をチェックする業務がある。毎月、通常時250枚、夏期・冬季講習時には500枚ほどあり、リーダーと副リーダーでチェックし、5時間~6時間かかってしまう。

 

5)指導用の教材の不足【特に高校生】

 塾で教材を用意してくれないので、生徒のものを使用するか、塾にある講師が寄贈してくれたものを使うか、自分で買わないといけない。また、生徒のものを使用したり、講師が寄贈してくれたものを使うとしても、教材をコピーするのに、とても時間が掛かってしまう。(特に赤本等入試問題)

・以上、15のように、教室1つに社員が1名しかおらず、教室リーダー・副リーダーが、社員が休みのときは、教室を回している。

・教室リーダーという立場から、他の学生アルバイト講師の査定(昇給に関わる)や「この時期に辞めないで欲しい」などの引き留めも行わざるをえなかった。(教室の評価に関わるため)

 

3、労働法上の問題点

1*)18時間を越える時間外労働を行ったにもかかわらず、賃金の25%の割り増しがなされていないこと。(労働基準法第37条違反)

2*)有給休暇の申請をしたにもかかわらず、申請を受け付けないこと。(労働基準法第39条違反)。

業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対しては、年次有給休暇を与えなければなりません

 

4、解決の経緯

・会社と何度か書面等でやりとりをした結果、25%の割増賃金有給休暇の取得とともにアルバイト講師の労働時間の実態把握に努めること教室リーダー・副リーダーに特別手当を支給するとともに、リーダー業務の範囲を書面で明確化すること、以上点について約束させた。

 

事例2:Oさん《喫茶店でのアルバイト》

1、相談内容

・喫茶店で、調理・ホールで働いていて、毎月給与から割った皿の代金が天引きされていることに納得がいかない1*、との事で相談。また、いまのバイト先の仕事自体は気にいっているので、バイトはこのまま続けていきたいとのこと。

 

2、労働環境の問題点

・給与は毎月手渡しで渡されており、毎回、破損した食器の代金がマイナスされている旨の記載が手書きで封筒に記載されていた。

・アルバイト・一般職員の区別なく、破損食器の給与天引きは行われていた。

・お話を伺う内に「食器の破損は弁償」との服務規程(店内ルール)があることが分かった。

 

3.労働法上の問題点

1*)労働基準法第16条「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」

 

4、解決への経緯

・未払いとして、天引きされた額の請求と、天引き制度自体の撤廃を求めて要求。

その天引き制度の撤廃を求めて会社に要求した。

1回目の会社の返答は、給与からの天引きは「労働者の同意を得て行っている、との主張。

Oさんと話して「そんな説明を受けたことはない」「納得いかない」とのことで、改めて、「食器の破損の弁償」自体の廃止を求めて再度、要求。

・後日、店の回覧で「食器の破損弁償」の廃止が通達されるととともに、Oさんの未払い賃金の返金も行われた。

・始めOさんは、あんまり店の状況に問題を感じていなかったが、店の不誠実な回答などをについて話し合う中で、制度自体の問題点を思い、弁償制度の廃止を一緒に主張することができた。

 

事例3:スーパーで働いていたTさん

〇相談者Tさんの事例

20166251630ごろ、関大の学生Tさんはバイトの時間中に店長から呼び出しを受け、仕事の精彩を欠く、という不当な理由によって突然の解雇を言い渡された。
 会社都合の解雇の場合は、使用者側が1ヶ月分の予告手当を支払わなければならないことをTさんは知っていたため、解雇するなら、予告手当を支払うよう、その日の2000ごろに店長に求めた。

しかしながら、Tさんは「お前が自分で辞めると言っただろう」というなど、あくまで自己都合退職であるとして、退職届まで書かせようとした。

Tさんはこのまま辞めるつもりはないと主張し、退職届を出すことを拒否するなど、明確な勤務継続の意思を持っていますが、結果的に勤務継続を断念しなければならない状態に置かれた。

Tさんの不当解雇を撤回し、復職を認めること。

Tさんが退職強要により退職に追い込まれなければ、店での勤務を継続することで得られたであろう賃金相当額を支払うこと、を求めて団体交渉を要求。

この店では、当時17歳の高校生アルバイトが仕事を押し付けられて、夜22時以降も働いていた。

また、退職強要該当行為があったことの証拠として、一緒に働いていたアルバイトから、部門長と次長に呼び出され、「Tを紹介して入れたのは誰だ?」と聞かれました。また「Tを辞めさせたのはスキルがないからだ」との証言を頂く。(また、名前を出してもらい組合に加入してもらう)

 

第一回目 団体交渉

・店長・本部の人事担当2名がとかんユニのメンバー5名が参加。

・店長は一言もしゃべらず、本部から来た人事担当が対応。

・最初は「自身で辞めますと言った」と、あくまで自己都合退職を主張。

・しかし、それでは、前後関係がおかしいこと、退職したという事実を認めていたのであれば、退職の手続きを全くとっていないことは不自然と、主張。

・また、他のアルバイトの証言を突き付けたところ、態度を一変し、再度事実確認をさせて頂きます、とのことで、一回目は終了。

 

2回目 団体交渉

・事実確認をするといったにもかかわらず、何も調べていなかった。

・退職強要をしたことに対しては責任を認めなかったが、「しかるべき手続きをとらなかった自分達の知識不足です」と責任を認める。

・金銭的に解決したい、とのことで、終了。

第二回目の団体交渉後、書面をもって解決金の支払いと労働条件の改善を約束させて交渉妥結。

 

Tさんの感想

・はじめから、店長の態度に苛立ちを感じていたが、団体交渉の場で、言いたいことが言えてよかった。

・また、仲間のアルバイトの協力も得られたこと、自分でおかしいと思うことは、おかしい、と言って、変えられることの経験ができたことが良かった。

 

事例4:高校生からの相談

飲食店(そば屋)で働いていた高校生2人からの相談

 

・体調不良などで休みを取りたいと言っていても休みがとりづらく、仕事中にも「人としておかしい」など暴言を言われたりした。

・年少者(18歳未満)であるにもかかわらず、22時を超えての労働が度々あった。

 

・他のアルバイト(高校生)が週40時間以上、1日8時間以上を超えて働いていた。

 

1月に急なシフト変更があったが知らされておらず、その日の夜に、本人に7~8回、友人に20回以上の電話があった。(家に行きます、学校へ行きますとのメールも)

 

・上記の事がショックで、退職せざるを得なくなった。

 

・深夜労働の未払い賃金、パワハラによって心身を崩した事に対する賠償、高校生であることを配慮していない労働環境の改善と復職を求めて、数回書面でのやり取りをした後、団体交渉へ踏み切った。

 

3回の団体交渉を得て、復職は叶わなかったが、高校生2人に解決金の支払いと共に、今回の事案で明らかになった労働環境の実態を踏まえ、年少者の深夜労働、労働条件通知書の交付、雇用契約書の管理等については、ユニオンの主張を真摯に受け止め、再発防止に努めることを約束させた。